聞き上手になる方法とその練習!聞き上手な人はどういう人?①

コミュニケーション

こんにちは。
心理カウンセラーの幸跡です。

最近では「聞き上手になりたい」「話し上手よりも聞き上手」というコメントや、聞き上手は円滑な人間関係やコミュニケーションに有効という記事などもよく見るようになりました。それだけ現代において「聞き上手」という能力に対する価値や需要が高まってきているのかもしれません。

そこで今回は、聞き上手の人はどんな人でどんな対応をしているのか、逆にどんな対応をしてしまうと聞き上手から遠のいてしまうのか。その「聞き上手」の本質にできるだけ迫ってみたいと思います。

今回は長くなりますので、前編・後編に分けて書いていこうと思います。

人間関係やコミュニケーションで悩んでいる人、また聞き上手になりたいと考えている人に向けてできるだけ深堀しながら進めていきますので、ぜひ一緒に考えてみてもらえたら嬉しいです。



聞き上手な人の対応

聞き上手な人とはつまり、話し手が本音を隠したり自分を守ったりせずに素直に気持ちよく話せる環境づくりができる人です。それは言い換えると「話させ上手な人」とも言えると思います。

聞き上手の人は普段どのような受け答えをしているのか。それを見る前に、逆に普段多くの人がやってしまいがちな話を聴く上で望ましくない応答を見てみるとわかりやすいかもしれません。

話を聴く上で望ましくない応答の例

1、命令や禁止をする
2、約束や決めごとをする
3、助言やアドバイスをする
4、元気づけようとしたり励ましたりする
5、知的・論理的に解釈をしすぎる


他にもいくつかあると思いますが、これらは決して悪意をもって行われることはありません。相手のことを考えて、本人は良かれと思ってやっている場合がほとんどです。ですが、結果的に相手の素直な感情表現や対話を通して自分自身と向き合う機会を奪ってしまうことにつながります。

なぜこれから望ましくない応答なのか、ひとつずつ詳しく見ていきます。

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望ましくない応答の詳細

命令や禁止をする

これは直感的にもわかると思います。「それはやめた方がいいよ」「それよりもこうしなさい」などと伝えることです。

話し手は自分の話をしたり感情を表現しながら、考えをまとめ今まで見えなかった自分の側面に気づいていきます。その大切な過程を、聞き手の主観的な正義や価値観を押しつけることで強制的に打ち切ってしまうような対応になってしまいます。

すると話し手の中では、素直に自分の話をするよりも自分の話を否定され禁止や命令をされたことへの抵抗として自分を守る方向に意識が働きます。そして話したいことが話せなくなり、それよりも聞き手に不信感や嫌悪感を持つことで心理的な距離を置こうとします。

また何かに悩んでいる人は、判断力や自主性の欠如からいわゆる「押し」に弱い状態になっています。そのため何かを命令したり禁止をすることでその強制力から行動の変化が見られるかもしれません。

ただそれはその強制力によって弱らされたときに一時的に表面的な行動が変わるだけで、本来対話によって得られる満足感やカタルシス(抑圧された感情の解放)などの効果は皆無です。当然、話し手の中に「話をしっかり聴いてもらえた」「理解してもらえた」という感覚が残ることもありません。

約束や決めごとをする

何か相談を受けたときに、「〇〇をする(しない)」という約束をしたり、「いついつまで〇〇を続けてみる」という決めごとを話し合うこともあると思います。たとえばこれが仕事上の話であれば、業績や目標達成のための責任として実施する必要はあるかもしれません。

ただ軽い雑談や、恋愛・結婚生活、家庭環境、仕事や身体的なことなど個人的な相談のときには、話し手に本音を話してもらうことの妨げとなります。

ひとつのことに相反する感情をもつこと、そしてその両方に価値を感じることを両価性といいますが、この状態になると人は双方の感情の間で葛藤を抱きます。たとえば特定の人に愛情と憎しみを同時に感じたり、本能的には嫌いな人を傷つけたいと思いながら倫理的には傷つけてはいけないと感じるなどです。

約束や決めごとをするというときにも同じ現象が起こります。ひとつの内容に対して自分とは違う相手の価値観が入り込むことで、自分の考えに対して正しさと誤りを同時に感じるような感覚から葛藤を覚えます。そうすると話をするよりも考え込むようになってしまい、気持ちよく話ができなくなります。

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助言やアドバイスをする

こちらもよくある対応ではないかと思います。求められていないにもかかわらず「〇〇してみたらどうだろう?」「たとえば私だったらこうするな」「〇〇すべきではないかな」などの助言やアドバイスをするという対応です。

もちろん聞き手としては正しいと感じて、良かれと思って助言やアドバイスをします。困っていたり悩んでいる人に対して、こちらが目標や道筋を定めてあげてそこに向かえるように働きかけてあげようとします。日常生活の多くの場面で見られる光景でありおそらく多くの人が実体験していることなのでこれを良しと考える人が多いですが、この方法には2つほど欠点があります。

ひとつは、精神的に自立している人にとっては自分は自分」というアイデンティティや統合性を保つことへの脅威と感じられてしまい、受け入れられないということです。

たとえば、雑談の中で「この前仕事でミスをして上司に迷惑をかけてしまった」という話が出たとします。このとき求めてもいないのにこんな風に助言されたとしたらどうでしょうか。

 

「だったら失敗を繰り返さないように〇〇という対策をとってみたらどう?」

どこか違和感を感じますよね。「そうだね、参考にしてみるよありがとう」と返答はするかもしれません。ただこのような状況のとき、精神的に自立ができている人の多くはすでに反省をして自分なりの答えを出そうと準備をしています。

そのとき他人からの助言やアドバイスは、そうした自主的な成長や自立を妨げるものとして察知されます。

その結果「そんなことは言われなくてもわかっている」「そのアドバイスが正しいとは思わない」などの拒絶や否認の感情を芽生えさせてしまいます。これではしっかり話を聴いてもらえたという実感が湧かないのもわかると思います。

もうひとつの欠点としては、依存気質の人にはその依存度を強めてしまうということ。先ほどと同じ例の場合、もし依存気質の人であればその助言を受け入れ実行に移すかもしれません。

ただそれでも状況が改善しなかったり同じミスをまた繰り返してしまった場合、「その責任を果たすのは自分ではなく助言した人」と考えるでしょう。いわれのない恨みを買うこともあるかもしれません。

またうまくいった場合でも、今度は「困ったら自分で考えず誰かに助言を求めればいい」ということを学習してしまいます。ですが毎回必ず誰かがアドバイスをしてくれるということは現実的ではなく、そのときに窮地に陥り身動きが取れなくなってしまいます。

求められてもいないのに助言やアドバイスをすることはこうした危険性もはらんでおり、結果的に聞き上手な人というよりも価値観を押しつける人、無責任な人という印象を与えてしまいかねません。



元気づけようとしたり励ましたりする

たとえば、恋人との関係がうまくいっておらず別れの危機を感じている友人から「最近うまくいっていなくて、もうダメかもしれない」という相談を持ちかけられたとします。

それに対して、こんな風に元気づけたり励まそうとします。

 

「大丈夫、何とかなるよ」
「そんなに思い詰めているんだからわかってくれるよ」
「悪いのはあなたじゃなくて相手だよ」
「別れたってすぐ次の人が見つかるよ」

これももちろん善意として、心から元気になってもらたいと思って言っています。ただこのとき話し手の中にはある心理が働きます。このような元気づけや励ましの対応は、”期待”という暗示として察知されるんです。

「大丈夫、何とかなるよ(だから良い方向に向かうように努力してね)」「そんなに思い詰めているんだからわかってくれるよ(だから落ち込むのはやめて前向きに考えるようにしてね)」というように。

このように期待という暗示として察知されると、話し手としては本当の気持ちを抑圧し実際感じている問題や悩みも否認せざるを得ません。そして期待に応えることを優先して、本当に話したいことや感情を表現することをためらってしまいます。

聞き手側が励ましや元気づける言葉を使えば使うほど、話し手の中には「本当に話したいこと(不安や弱音や愚痴など)は話してはいけない、話すべきではない」という気持ちが芽生えていきます。結果的に、しっかり聴いてもらえたという実感が残ることは少なくなります。

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知的・論理的に解釈をしすぎる

聞き手側に知識がありロジカルに考える力があり、そうして解釈した内容を話し手に返そうとする。一見内容を深く理解し話をしっかり聴いてくれているという印象があるかもしれませんがこちらも逆効果になることがあります。

理由としては、精度高く解釈されるほど相手は「診断されている、評価されている」ように感じるようになるからです。

こちらは心理カウンセリングの場でも陥りやすい状況であり、適切な解釈や診断ができるようになればなるほど、必要なのは話を聴くことや共感を示すことよりも「問題や悩みの原因を本人に伝えること」と考えてしまうようになります。

ですが、どれだけ正確で適切な解釈がなされたとしても、それは相手にとって受け入れることが許容される範囲でしか「価値のあるもの」としては認識されません。

たとえば先ほどの恋人とうまくいっていないという例の場合(Aさんとします)。話を聴き進めるにつれて、Aさんには過去に別の恋人に裏切られた経験があり、今の恋人を信頼できずつい束縛してしまうような傾向があることがわかったとします。

このときこんな風に返答されたらどう感じるでしょうか。

 

Aさんは過去の経験から、他人は裏切るものだし自分は他人から好かれないっていう自己概念をつくり出してしまっているのかもしれないね。
だから実際の体験の中でそうした「裏切られる」「好かれない」っていう部分に一致するところしか見えなくなっているんだと思う。
でも今の恋人とだって楽しい出来事があるはずだし、今と前の恋人は別人なんだし、もっと視野を広く持った方がいいよ。
それであまり気にしないでもっと堂々としていた方がいいと思う。

おそらく言っている内容は間違いではないと思います。実際にAさんの問題はそうした理想と現実の体験の乖離や、視野が狭くなっていることからくるものなのかもしません。

ただ、このような話をされてもAさんとしてはそれを受け入れる準備ができておらず、話を聴いてもらえたというよりどこか診断的な要素の方が強く残ってしまい、その内容としっかり向き合ったり吟味しようという気持ちにはなれません。

逆にそれが的確で核心をついた解釈であればある程、「あなたに私の何がわかるの」「他人事だと思って適当なことを言わないで」などとやはり防衛的な態度を取る方向に向かわせてしまいます。

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聞き上手になる方法とその練習!聞き上手な人はどういう人?②へ

少し長くなりましたので、今回はいったんここまでにしたいと思います。

今回は「聞き上手な人」から遠ざかってしまうような望ましくない対応方法を詳しく見てきました。次回は、実際に聞き上手の人がやっている対応やなぜそれをやると聞き上手と思われるのかなどを具体的に考えていきたいと思います。

ぜひこちらから続きの内容をご覧いただけたら幸いです。

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ここまでお読みいただきありがとうございました。



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