こんにちは。
心理カウンセラーの幸跡です。
今回の記事は、前回の「聞き上手になる方法とその練習!聞き上手な人はどういう人?①」からの続きとなります。まだ前回分をお読みでない方は先にこちらからご覧ください。
前回では、聞き上手な人は決してやらないような望ましくない対応方法を見てきました。今回の記事では、では実際に聞き上手の人がどのような対応をしているのか、そしてどうしてそれが聞き上手と思われるのかという具体的な部分を見ていきたいと思います。
今回もぜひ一緒に考えてみてもらえたら嬉しいです。
聞き上手の人の共通点
まず前回の記事でお伝えした5つの望ましくない応答はしない、これが前提となります。
そしてその上で聞き上手と言われる人が自然と行っていることには、いくつかの共通点があります。今回は3つほど見ていきたいと思います。
頷きやあいづちをする
傾聴やアクティブリスニングなどに興味があったり調べたりしたことがある人にはお馴染みの内容かもしれませんが、やはりこれが何よりの基本になります。
日常で当たり前にやっていてスキルなどと言われると少し大げさに感じるかもしれませんが、カウンセラー、相談員、ソーシャルワーカーなど人を援助する仕事にも必須の技能と言われており、これは話し手にとって「受容」というとても強力な効果があります。
軽く首を縦に振りながら頷く、「うんうん」「へぇ〜」「えー!」「なるほど」などの感嘆詞を入れながらしっかりあいづちを入れる。それだけで相手は「何を話しても良いんだ」という許容された環境を自覚します。
そして言葉を選んだり顔色や空気を気にしたり自分を守る必要がないことがわかり、自分で話を掘り下げていくことができます。
感情を明確にしてあげる
話をしている人は、話をしながら自分の思考や感情を整理していきます。ただ言葉にできるのはその中でもしっかり意識化できているものだけであり、まだ明確になっていない何かモヤモヤしたりフワッとした感情を抱えたまま話をすることが多くあります。
そこを拾って相手に返してあげるという感覚です。難しく感じるかもしれませんがこれも実は日常的に行われていることで、これが上手な人は会話の中で相手から「そうそう!」「そういうことなんだよ!」というような反応をよくもらっていると思います。
たとえば友人との雑談中、そこから派生してこんな内容の話を聞いたとします。
きっとこの人の中には戸惑いや混乱があったり、何か悪いことをしたのかなという根拠のない不安があるでしょう。このときこんな風に返答します。
すると話しながら気持ちを整理するときに聞き手にその手伝いをしてもらっているような感覚が得られ、その内容が的確なほど自分の感情を深く理解していくことができます。
これは相手の立場になって、相手の目や耳で状況を理解しようと努めなければできることではありません。この相手の目で見て耳で聞いて、心で感じようとするその姿勢を”共感”といいます。共感をしながら、相手のまだフワッとしている感情を明確にしてあげるということです。
ひとつ注意が必要なのは、あまり勝手な解釈をしないということ。あくまで相手が表現した範囲の中で明確化をしていくということです。
前回の記事で望ましくない対応のひとつに「知的・論理的に解釈をしすぎる」というものを挙げましたが、まだ表現していない部分まで勝手に解釈して伝えようとすると、相手はそれを受け入れる準備ができていないため脅威として察知され自分を守りに入ってしまいます。
質問や言い直しをする
話しにくい内容であったり他人と話をすることに慣れていない人であったりすると、言葉を選びすぎて本当に言いたいことが入ってこなかったり、支離滅裂な内容になったり、つい脱線してしまうことなどもあると思います。
そんなときは、相手に自分の話している内容をしっかり理解してもらうために、質問をしたり自分の言葉で言い直しをしたりします。
自分が何を話しているのかわからなくなったり、つい脱線しすぎて本題に戻れなくなってしまうと、焦りや緊張も生まれ自分でその状況を脱却するのは難しくなります。特にそれが悩みごとの相談などであれば尚更です。
そんなとき、こちらが質問をしたり言い直しをしてあげます。それが正しければ「そうそう」とまた戻ってきてもらえるし、外れた質問や言い直しであっても「いや、そうじゃなくてね・・・」と自分から正しい方向へ修正をしてくれます。
この質問や言い直しは、自分の興味を満たすためにするのではなく、また自分が正しいと思う方へ誘導するために行うものではありません。あくまで話し手が話しながら自分と向き合えるように、しっかり自分の気持ちを理解できるように行われるべきものです。
聞き上手な人や相手に本心を話させるのが上手な人はこういった対応を無意識的に行っています。話し手側としては、どんどん話しながら自分の感情や認識が整理されていきます。
具体的な助言をもらっているわけでもないし肯定されたり励まされているわけでもないのに、話し終えた頃にはとてもすっきりとした解放感や納得感を得られるようになります。
本当に聴く技術に長けている人と話すと、まるで自分自身と話しているような感覚に陥るとも言われます。それは圧力や脅威がない許容的な環境の中で、自分の話した内容からどんどん感情が明確化され、そして脱線したり滞ることなく自己洞察が進み深いところにある本当の自分の気持ちに気づけるからではないかと思います。
なぜ「聞き上手な人」という印象を生むのか
それでは最後にこうした対応がなぜ聞き上手と感じさせるのか、なぜ聞き上手という印象を生むのか、その本質について考えていきたいと思います。
1、頷きやあいずちをする
2、感情を明確にしてあげる
3、質問や言い直しをする
これまで見てきたこの3つには共通点があります。そのひとつは関心の位置です。これらはすべて、自分ではなく相手に関心を置いているからこそできるもの。
相手の話す内容に対して肯定も否定もせずにただ共感して受け入れようとする姿勢、自分の欲求を満たすためではなく相手の自己理解を促進させてあげるための姿勢。それらによって「私を受け入れ耳を傾けてくれている」と実感ができるから、聞き上手という感覚が残るのではないかと思います。
また、意識的には「しっかり耳を傾け話を聴いてくれる人」と感じているかもしれないですが、もう少し深層の部分ではまた別の感覚が生まれているように思います。それは「自分を知ることを手伝ってくれる人」という感覚です。
自分は今どんなことを話していてどんなことを感じていて、どんなことに価値を感じたり影響を受けたりしているのか。それを知るための手伝いをしてくれる人という感覚。
それが体験できたとき、言葉では表現が難しい解放感や納得感を得られると思います。そのことに感謝や敬意を込めて表現されるのが「聞き上手」というものなのかもしれません。
聞き上手な人とは、言い換えれば話させ上手な人。そして話させ上手な人とは、もっと言えば「自分を知り理解させることが上手な人」と言えるのかもしれないですね。
最後に
今回は少し技術的なところに焦点を当てた内容でしたが、それを生かせるかどうかは前提となる姿勢であり態度です。
聞く側も自分を偽らず、否定や肯定をしたり評価や勝手な判断をすることもなくただひたすらに受け入れようと努める。そして相手の立場になって共感しようとする姿勢をしっかり示す。
そうした姿勢や態度から生まれる頷きやあいづち、明確化や質問や言い直しなどによって、はじめて「聞き上手」という印象ができあがります。
これは誰かと雑談をするときでも相談に乗るときでも、人とのコミュニケーションのすべてに生きてくるものだと思います。
聞き上手な人になると、信頼され慕われ人間関係がとても円滑になっていきます。ぜひ話を聞くという技術をしっかり身につけ、豊かな毎日を過ごしてもらえることを願っています。
最後までお読みいただきありがとうございました。